オープンソース・ソフトウェアのための新しい資金調達モデル

2020/08/04 07:30

Colin McDonnell
TypeScriptで最も人気のあるスキーマ検証ライブラリ「Zod」の作成者。
この記事は、著者の許可を得て配信しています。
https://vriad.com/essays/a-new-funding-model-for-open-source-software

既存のオープンソースの資金調達モデルは、小規模なプロジェクトではうまく機能しません。

大規模なプロジェクト、例えばオペレーティングシステム、フレームワーク、CMS、あるいは完全に自己ホスト型のアプリケーション などは、ユーザー、特に企業のユーザーからより多くの価値を引き出すことができる特権的な立場にあります。API や製品全体がそれらの上に構築されているため、一回限りの寄付や毎月の寄付で持続可能な収入を得ることができるほどの十分な評価(あるいは、敗退への恐怖心!)を得ることができます。

しかし、ほとんどの OSS プロジェクトはそこまで大きなものではありません。GitHub上の典型的なプロジェクトはユーティリティと言ったほうがいいでしょう。ひとつのことをしっかりとこなす小さなツールです。複雑なアプリケーションを構築していくうちに、これらのユーティリティを何十個も使うことになるかもしれませんが、そうすることで開発にかける時間を何百時間も節約することができます。

残念ながら、このようなユーティリティは、どれだけ広く使われていても、愛されていても、寄付から意味のある金額を得ることはほとんどありません。react-router を考えてみましょう。GitHubで41.3kのスターがつき、NPMから毎週3Mのダウンロードがあり、Reactベースのシングルページアプリケーションにほぼ一般的に導入されているにもかかわらず、年間 $17k以下 の寄付しか得られていません。

問題の根源は、オープンソースの寄付がプロジェクト単位で行われていることにあります。GitHub スポンサー や OpenCollective を使ってプロジェクトを支援するには、サポートしたいプロジェクトごとに毎月自動更新されるサブスクリプションを作成しなければなりません。さらに、いざというとき(「よし、Xをスポンサーにしよう!」と思ったとき)には、すぐに寄付をしないように「論理的」に考えることも可能です(「もしそれが来週新しいホットなもの取って代わられたらどうしよう!」とも思います)。こういったことがオープンソースへの寄付総額に大きく影響し、寄付額が下がります。そして最終的には、有用なプロジェクトだけが資金を得られるのです。そして、それらのプロジェクトは通常、フレームワークや自己ホスト型が可能なソフトウェアなどの「大規模なもの」です。

巨大なプロジェクトだけでなく、中小規模のプロジェクトにも対応できるような新しいモデルが必要とされています。そこで私は、OSSの持続可能性に対する新しい(感じの)アプローチを提案したいと思います。

「スポンサープール」の導入

  1. 毎月、あなたは「ウォレット」に金額をいくらか寄付します。
  2. あなたの資金は、あなたの「スポンサープール」にあるプロジェクトに分配されます。あなたのスポンサープールは、あなたがサポートしたいオープンソースプロジェクトのセットです。
  3. プールに新しいプロジェクトを追加するのはワンクリックでOKです。GitHubでレポを起動するのと同じくらい簡単です。

それだけです。そこまで難しいものではないので、OSSの主要な企業がオープンソースへの寄付を増やすためにこれを導入していないのは驚くべきことです。

これはOSSの持続可能性という崇高なワンクリック・スポンサーシップを実現できるでしょう。

一旦自分のスポンサープールに寄付をすると、他のプロジェクトへの支援もワンクリックでOKです。

追加のプロジェクトを支援する際の限界コストは、心理的にも金銭的にもゼロになります。これはとても革新的です。

なぜこちらの方がより上手く機能するのか?

オープンソースへの寄付総額が劇的に増えると私が思うのはなぜか。それに答えるために、仮の質問を考えてみましょう。

あなたの収入のうち、毎年どれくらいの額をオープンソース・ソフトウェアに寄付したいと思いますか?

この投稿を読んでいる典型的な過払い金のHNラーカー(リードオンリーメンバー。 ネット掲示板やチャットルームなどで、他の人の書き込みや議論を読むだけで、自分は何も書き込みをしない人)が数百ドルの数字を思いついたのではないかと疑っています。それを実際にあなたが寄付している金額と比較してみてください 。違いはありますか?私の場合は、違いがあります。それは、「オープンソース・ソフトウェア」という抽象的な概念に寄付をする方法が今のところないからです。しかし、スポンサープールに関しては、寄付の金額が上記の質問に対する正直な答えを反映しています。

GitHub

これは私の考えですが、GitHubがGitHub スポンサーの延長線上でこのモデルをネイティブにサポートするのがベストだと思います。GitHubはほとんどのプロジェクトが存在する場所なので、このようなゼロフリクション(ハードルが低い)寄付システムを作るには最高のポジショニングだと思います。

もちろん、もしGitHubがこのようなものを実装したら、おそらく寄付の仕組みをスターから切り離すことになるでしょう。スポンサープールを作成して資金を提供したユーザーには、現在の 「Sponsor」 ボタンの代わりに「Add to Pool(プールに追加する)」ボタンが表示されるようにしてもいいかもしれません。

GitHub には、このアプローチに切り替えるための金銭的なインセンティブのようなものがあります。現在、GitHubはGitHub スポンサーのトランザクションの処理手数料をすべて負担しています。つまり、月に1ドルでプロジェクトのスポンサーになった場合、メンテナーは月に1ドル、GitHubはクレジットカード会社に0.30ドルを支払うことになります。寄付額が大きいほど、GitHub が支払う手数料は比例して少なくなります。

さきほど「比例的に小さくなる」と言いいまいた。より多くの寄付が処理されるようになった場合(これがこの提案の目的です!)、手数料と寄付の比率が小さくなったとしても、最終的にはより多くの手数料を支払うことになるかもしれません。スポンサープールのコンセプトが大成功した場合、たとえば年間10億ドルの累積寄付があったとしても、GitHubは2000万ドル近くのカード手数料を支払うことになるでしょう。そうなると、マイクロソフトも腹が立つのではないでしょうか。

最後に補足です。寄付のレベルに応じてアンロックされる埋め込み可能な「バッジ」を見てみたいと思います。ある人のウェブサイトのフッターに「GitHub スポンサー ゴールドバッジ」というバッジが表示されていて、その人がオープンソースに年間1000ドル以上の寄付をしていることが分かるというのを想像してみてください。このバッジをクリックすると、それを確認できる信憑性の高いサイトが表示されます。私がそのバッジのデザインを簡単に作ってみました。

そういうバッジを付けることを一部の人は「美徳シグナリング(自分が道徳的な活動を支援していることを誇示する)」と指摘するかもしれませんが、このようなアプローチは、a) 知名度を高め、b) オープンソースへの寄付をより多くの人に正の強化(好ましい行動を褒め、同じ行動を繰り返させる)をするための実証済みの方法です。

まとめ

これは、膨大な数の潜在的な解決策がある難しい問題です。既存のアプローチを批判するつもりはありません。彼らは私を含め、メンテナーのために多くのことをしてきたし、それを過小評価するつもりはありません。また、このようなものを構築するためには、私が知らないような実装上の大きなハードルや規制上のハードルがあるかもしれません。これは単なる仮定の話に過ぎません。

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