有名なテックユニコーン企業で働いて驚くこと(前編)

2020/06/19 07:44

Gergely Orosz
Uberのエンジニア。過去、Skype、Microsoft、Skyscannerなど、多くの成功企業でのエンジニアリングとリーダーのキャリアを持つ。自身のブログでは、成功した製品・プロジェクトを構築してリリースするための実践的なアプローチを発信し、多くの読者を得ている。
この記事は、著者の許可を得て配信しています。
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私の過去に働いた数社-Skype、Skyscanner、Uberは有名企業で、その企業が「ユニコーン」の段階で参加してきました。ユニコーンとは、評価額が10億ドルに達した未公開企業のことで、通常は10年以内にこれを達成します。

これらの企業はすべて、私が入社した時点で既に有名な消費者ブランドであり、私の友人たちも毎日のようにその会社の商品を使用していました。そのため、私は大きな期待を抱いていましたし、その会社で仕事を始めることにワクワクしていました。しかし、期待と現実は必ずしも一致しません。ここでは、私がこれらの仕事の経験から学んだ13の意外だったことを紹介したいと思います。

1. マスコミを安易に信じてはいけない - 誇大広告でもそうでなくても

Skypeと特にUberは、私が入社する前も入社後も、この企業についてかなり多くの報道がなされていました。私がこれらの会社で働く前は、これらの記事の多くを鵜呑みにしていました。2011年に月間1億人以上のユーザーを獲得したSkypeの成長が止まらないかのように見えたことや、Uberが2017年の大打撃などの記事が大々的に取り上げられました。そういった記事を読むと、誰も働きたくない会社のように思えました。

皆さんが企業で働けば、メディアや報道記事がいかに情報の取捨選択をしているかを実感できます。2013年にSkypeのユーザー数が驚くほど伸び悩んでいたことや、2013~2014年の1年間にWhatsappが急成長したことについて述べた記事などは読んでいないはずです。これはほとんどの企業で話題になっていましたが、それについての報道はありませんでした。ただ一つだけ、情報ツウの人だけが気付いたことは、Skypeがプレスリリースでユーザー数を報告するのをしばらくしてやめてしまったということです。

2017年のUberのひどい1年と同じです。内側から見れば、激動の1年でしたが、実は微妙に良い部分もたくさんあったのです。 そして、みなさんはおそらくその良い部分については何も聞いていないはずです。全スタッフへの5%以上の給料の値上げについての報道はありませんでした。リスニングセッションでは、そのほとんどが女性であり、マイクを握って、今から何を変える必要があるのかを話していました。会社全体がどのように大変な状況にあり、どのように物事が崩壊していることを社内で認識していたのか、そしてそれは1つのケースだけではなく、私たちが修正しなければならないのは何か大きなものだったのか。社内のプライベートチャットで、社員が同僚や上司に「社内の慣行を変えなければ、私は辞めます」とメッセージを送っていたこと。匿名のインテグリティ・ヘルプラインの導入。それを導入すれば、不適切な言動があれば、追跡調査を行っても、そのままに放置していたことなど、すべて報告することができます。そういったよい出来事もあったのです。

メディアは通常、クリックしてみんなが読むような記事を書きます。実際に起きていることよりも、より刺激的でセンセーショナルな見出しの方が、より多くのビューを獲得します。衝撃的なニュース、つま「えっマジ?!これは読まないと」と思わせるニュースであればなおいいのです。Skypeは実際はそれほど驚くべき企業ではなかったし、Uberも、主流メディアの記事やハッカーニュースのフロントページに掲載されている内容ほどひどくありませんでした。有名なテック企業への入社を検討しているのであれば、よく調べて自分の意見を持つようにしてください。日常の些細な出来事よりもセンセーショナルなニュースの方が優れているという立場の報道やフォーラムだけに頼るよりも、はるかに良い結果が得られるでしょう。

2.みなさんが思っている以上に崩壊しているところは多い

これらの企業はすべて、毎月数千万人、数億人の顧客を抱え、大成功を収めている企業です。それらの企業はすべて、最高の人材しか採用しておらず、イノベーションの最先端を担っていると謳っています。しかし、実際入社してみると、10億ドル規模の企業の中では予想もしていなかったような壊れたものや無視されているものがたくさんあって驚きました。

私が入社した当時、メインのSkypeクライアント(当時約2億人が使用していた)には、ユニットテストがありませんでした。これは、TDDとテストがかなり主流になっていた頃の話です。それでも、リリースは何十人もの手動テスターが何千ものテストケースを処理するばかりでした。コードをコミットすると、2~3週間後にはバグが発生したかもしれないという連絡が来るようになっていました。そういえば、リリースに数ヶ月かかったことや、クライアントはDelphiで書かれて維持されていて、ニッチな言語ではない何かに移行させようとして何度か失敗したこともあったのですが、もうお話しましたっけ?

私は、ユニコーン企業の会計システムが壊れているのを見たことがあるのですが、会計は、どのデジタル購入がソフトウェアによって誤分類されているかを毎月調整しなければならず、結果として会計エラーが発生しました。問題と解決策の両方がソフトウェアに基づいていたにもかかわらず、この問題は何年も続きました。私は別のユニコーン企業が、デジタルマーケティングチャンネルの一つで広告を購入するために何百万ドルものお金を無駄遣いしていたのを見てきました。1年後、ある開発者が不審に思い、最終的にこのバグを発見して修正しました。別のユニコーンのメインシステムは、チームがデータの保存方法について全社に伝えられたガイドラインを無視した後、何時間もダウンしました。

はっきり言って、さきほど書いたようなことは、急成長している若い企業ではごく普通の起こることです。私にとって衝撃的だったのは、面接の際に、私がいかにして「よく整備された会社」のイメージを売り込まれ、信じようとしていたかということです。私はまた、Googleから入社した何人かのエンジニアが、最初の月にこれらの複数の「Googleの小さなバージョン」であるユニコーン企業を退社したことを知りました。 彼らがそう信じてきたものが、実はそうではなかったのだと分かった後にです。「Googleの小さなバージョン」といっても、実際は Googleからかけ離れた小さな、しかしかなり厄介なバージョンの企業だったのです。

3.企業の最初の成功というのは純粋にラッキーだったから

成功したユニコーン企業がどのようにして設立されたかについて書かれた記事を読んでみると、創業者たちは驚くべきビジョンを持っていて、それを実現したように思えます。ギャレット・キャンプ氏はタクシーを確実に呼ぶことができず困った経験がありました。その問題を解決するためにUberを設立したのです。ギャレス・ウィリアムス氏は、確約の旅行情報を見つけることができなかったので、Skyscannerを設立しました。

そういった企業に勤めていなくても、初期の頃の企業の成功にはどれほど運に左右されていたのか、ということが疑問に思います。それぞれのユニコーン企業には、同じアイデアを持ち、似たような方法で実行している競合他社がいくつかありました。Uberの場合は、素晴らしい投資家からの出資を受けて早くに立ち上がったSidecarがありました。Skyscannerには、ものすごい数多くの競合他社が存在していましたが、彼らはヨーロッパ市場を獲得し、米国とアジアにも大きな影響を与えました。

会社で働いていると、運が成功の大部分を占めているという話を多く聞きます。タイミング、初期に起きた出来事、当時は取るに足らないように思えたが、実は大変重要だった決断などです。Skypeの場合は、サーバの運用がまだ非常に高価だった2000年代に、P2Pの性質を利用して急速に規模を拡大することができましたが、十分な帯域幅の接続が一般的になり始めていました。Skyscannerの場合は、その粘り強さとタイミングの良さには目を見張るものがありました。スタート時にはいくつかの競合他社がありましたが、フライトの取引をスクレイピングしても実際にはお金になりませんでした。サイトが積極的にそれらをブロックしようとしたとしても、データをスクラッピングのモグラ叩きゲームのようにやっつけながらも、彼らは粘り強く頑張りました。彼ら自身がデータをスクレイピングしていたサイトには大きすぎるくらいになるまで、彼らは何年も何年もこれを続けました。 そして、トラフィックを誘導し、無視するために、彼らが受け取ったトラフィック分の支払いを開始します。彼らの初期の頃の競合他社は途中で挫折し、その後の競合他社は、Skyscannerから直接データを買うようになりました。

さらに興味深いことに、私が話を聞いた初期の従業員たちも、「自分たちの企業がここまで成長するとは思わなかった、あるいは自分たちが作っているものにこれほどの需要があるとは思わなかった」とよく話していました。実行力は確かに重要であり、それが欠けていると会社は死んでしまいます。しかし、需要が高まっている適切なタイミングで、適切なことを始めたということは、私が働いてきたすべてのユニコーン企業に共通していました。まさに純粋にラッキーだったとした言いようがありません。

4. 誰もが思っている以上に、直感的な判断や勘で製品を決定することがある

その会社の中核をなすようになる成功した商品を発表すると、多くの人は、その企業自身、それが成功することを知っていたに違いないと思っているはずです。少なくとも発売以前にユーザーテストを行ったと思っている人も多くいるでしょう。

しかし、現実はそうではありません。通常、誰か (具体的に言えば、多くの場合、プロダクトマネージャーですが) が、この機能をどういうふうに開発していくかの提案をします。それが企業の初期段階であれば、彼らはエンジニアに自分たちの考えを伝え、それを出荷します。もう既に大きな企業にまで成長している企業であれば、ドキュメントを書いて承認を得ます。本当に何かを出荷したいときにバックアップするためのデータはこの時点で必要ですが、適切な予測をすること自体は重要なことではありません。

あまりデータを見ずに、直感で行くのは悪い戦略だと思うかもしれませんが、私はその逆を見てきました。Skypeは、あるプロジェクトで最も多くのユーザーリサーチテストを行った場所でした。しかし、私たちは最も悪い決断をしてしまったのです。14人で2日間かけて行ったユーザーリサーチテストでは、私たちの提案を好ましいと思う人と好ましくない人が8:6になることがよくありました。そこで私たちはさらに2つのテストを行いましたが、これはまた引き分けになってしまい、プロダクトマネージャーは両方のバージョンをビルドしてからA/Bテストを行うことにしました。そして、A/Bテストの結果がほぼ引き分けになり、結局プロダクトマネージャーが直感で、最初からより良いと感じていた方を選びました。

これをUberのチームと比較すると、Uberの創業当時は、いくつかの顧客の議論に基づいて製品をローンチしていましたが、これは大人気商品になるか、派手に失敗するかのどちらかであることを直感的に感じるものをローンチするようにしていました。ないよりも正確だからです。彼らは素朴な製品を超高速で構築し、それをローンチしたことで、ホッケースティック 型の成長曲線に沿った成長となったのです。そしてこれが、現金で支払うUberと、Uber Eatsの両方が生まれた経緯です。今日ではどちらも10億ドル規模のビジネスとなっています。

5.みんなが思っているほど過程は重要ではない

2011年、Skypeはウォーターフォール型開発を行っていました。変更を加え、長い時間をかけて手動でテストを行い、リリースするという工程です。彼らはマーケットリーダーでした。ビデオ通話と言えばSkypeでした。2012年以降、Skypeはアジャイルへの変革を行い、全チームがスクラムのトレーニングを受け、証明書を取得して隔週でスプリントを行い、より反復的に出荷できるように設定しました。2014年には、これまで以上にアジャイル化が進んでいました。しかし、市場シェアは低下し、Whatsappのような競合他社がSkypeで大きな利益を上げていました。2020年には、Skypeに残されたのは、これまで以上に優れたプロセスとアジリティでした。では、最近のお気に入りのビデオ通話アプリは何でしょうか?残念ながら、ここ最近は、Skypeは私のお気に入りではりません。

ブログを読んだり、カンファレンスに参加したり、エンジニアリングリーダーがプロセスの重要性について話しているのを聞いたりして、どのようにしてプロセスを変更して、このような結果になったのかを聞くことがあると思います。Spotifyモデル、アジャイル、 Scrum、Kanban、Scrumban。ほとんどの人が教えてくれないことだけれど、私が見てきたことはこうです。プロセスにフォーカスし過ぎているのです。フォーカスすること、明確さ、透明性、健全な慣習はとても重要なことです。しかし、それらを正しいものにするのは、会社全体のプロセスを変更するよりも難しいことなのです。また、これらはどちらもそれほどワクワクするようなものではないので、話したり書いたりするほど面白いものではないのです。

Skypeでは、Microsoftの買収後、フォーカスがあまりされなくなりました。何百人もの人が認定したスクラムマスターを擁する新しくてピカピカのアジャイルプロセスがあったとしても、それは問題ではありませんでした。その企業のほとんどがあまり進歩がなく、追いかけるべき明確な目標がありませんでした。私たちはNPSのために最適化していたのだろうか?Whatsappを利用していたのだろうか? 月間ユーザー数を増やしていたのか?収益の拡大したのか?会社のビジョンを説明したものが印刷され、食堂やトイレに置かれていました。ただ、その2ページにも渡る文書には、その質問に対する答えは全く書かれていませんでした。

これをSkyscannerと比較してみてください。オフィスには、その日にどれだけのコミッションを獲得したかをライブで表示する画面があり、毎日詳細なメールに収入の内訳が書かれていました。私が入社したときは、この透明性の高さを信じられませんでした。Skyscannerが数年間、数少ない収益性の高いユニコーン企業の1つであり、チームがどれだけ貢献しているかをすべての人が知っていたのは不思議なことでしょうか?あるいは、hackathons(ソフトウェア開発分野のプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、 プロジェクトマネージャらが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベント)では、この指標を上げるための秘密があったのでしょうか?Uberも同じです。Uberには、チーム間で共有されたプロセスはありませんでしたが、明確な目標と指標があり、内部の透明性が非常に高かったのです。実行はかなりフォーカスされて行われていました。ある年には、成長とアクティブな顧客に焦点が当てられていました。他の年ではパートナーの満足度や安全性に焦点を当てていました。私たちは、自分たちがどこに向かっているのか、その理由を常に把握していました。

6. 自律性と驚くほどの成長

ユニコーン企業は、採用と実行のスピードを上げるためにVC(ベンチャーキャピタル)からの資金を投入しているため、とんでもない速さで成長することができますが、それは、この速さが大きな見返りをもたらすという計算に基づいています。急成長という現実は、チームや個人に高い自律性を与えなければ実現できないのです。だからこそ、高度成長期のユニコーン企業ほど自由度の高い運営ができる場所はほとんどないでしょう。

Uberでは、3年連続で毎年オフィスの数を2倍以上に増やしました。それは、私が入社したときにアムステルダムで20人の開発者のために機能していたプロセスが、50人になると機能しなくなることを意味しています。50人のために考え出したことが150人では通用しなくなってしまったのです。そして、物事を効率的に進めるために変更を加えるのは、現場の人々、つまり私たちにかかっていました。

Uberは高成長の極端な例ですが、私が働いていたユニコーン企業のすべての企業では、高度な成長と自律性が両立していました。自律性は単なるオプションではなく、成長するためには必要不可欠なものでした。自分が主となり、積極的に物事を修正するためにステップアップすることは、このような場所で成功するための必須の道でした。自律性とオーナーシップはソフトウェア開発に限ったことではありません。それは、製品の決定に踏み込んで挑戦したり、カスタマーサポートを正しく修正するためだったり、エンジニアのコンフォートゾーンから一歩踏み出したりすることを意味していました。このような経験が、これらの会社で働く多くの開発者が製品志向のソフトウェアエンジニアになるのに役立ったのです。

自律性と専門的な高度な成長は、成長期にあるユニコーン企業で働いていて最もやりがいを感じたことの一つです。

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