有名なテックユニコーン企業で働いて驚くこと(後編)

Gergely Orosz
Uberのエンジニア。過去、Skype、Microsoft、Skyscannerなど、多くの成功企業でのエンジニアリングとリーダーのキャリアを持つ。自身のブログでは、成功した製品・プロジェクトを構築してリリースするための実践的なアプローチを発信し、多くの読者を得ている。
この記事は、著者の許可を得て配信しています。
https://blog.pragmaticengineer.com/surprising-things-about-working-at-tech-unicorns/

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7.基本をぶち壊さないことは、イノベーションを起こすのと同じくらい(それ以上ではないにしても)重要である

これらのユニコーン企業はすべて私が入社した時には創立してわずか10年も満たない企業ばかりでした。ほとんどの場合、彼らは一つのプロジェクト上手くいって、それで顧客を獲得し、収益を上げていました。Skypeの場合は、それは他の人と確実に通話することでした。Skyscannerにとっては、最安値のフライトを見つけること。Uberでは、5分以内に車に乗ることだったのです。

さらに、全ての企業は、新しいビジネスの革新と構築に大量の投資を行いました。Skyscannerはホテルとレンタカー事業を開始しました。UberはUber Eats、Uber Freight、その他数十社を立ち上げました。しかし、一貫して成功を収め続けているユニコーン企業は、「コア」となる製品が成長し続け、人々がそれを利用し、それを気に入ってくれて、それにお金を支払ってくれることに執着することに一極集中し続けたのです。Skyscannerは、フライトのカバー率と収益を重視していました。Uberでは、旅行の乗車率やドライバーの満足度を重視し、それを中心に様々なことを判断していました。そして、指標や市場シェアが下がり始めたとき、彼らは迅速に反応し、トレンドを逆転させたのです。

しかし、Skypeは、コアとなる付加価値にしっかりと集中することを忘れ、競争に負けてしまうと、それがどういう結果をもたらすのかを目の当たりにした場所でした。Skypeは、その時大変多くのクライアントを獲得しました。私はその時、XBox OneのSkypeに取り組んでいました。グループ通話のGroupMeを買収し、Qikという新しいアプリを立ち上げました。新しいプラットフォーム、GroupMeとQikという「新しい」ものに注目が集まっていましたが、ユーザーの声に耳を傾けることを忘れていたように思います。Skypeのメールメッセージが配信されるまでに数分から数時間かかることに不満を感じていたユーザーもいました。これは、メッセージングでもP2Pプロトコルを使用していたためで、この設定では、他のほとんどのチャット専用アプリが使用していた集中型モデルとレイテンシー的に競合することができなかったからです。

四半期ごとの全社会議で、社員からの繰り返しされる質問は、「Whatsappが大流行していることに対して、我々はどのような対応をしているのか?」というものでした。しかし私たちが期待していたリーダーからの明確な答えはありませんでした。それどころか、「その件に関しては気にしないように。Whatsappとは土俵が違うんだ」という答えが返ってきたのです。Skypeの上層部は、「メッセージアプリはビデオ通話を提供しておらず、Skypeが提供しているようなレベルでは人と人をつなぐことができないため、WhatsappはSkypeの競争相手ではない」と強調し続けました。私たちは、シームレスでクラス最高のコミュニケーションこそがSkypeの付加価値の核であることを忘れていました。私たちは多くのことに重点を置いていましたが、メッセージングのビデオ通話以外の部分の信頼性を高めることは、その中の1つではありませんでした。メッセージングの信頼性を高め、サーバーベースにするには何年もかかりましたが、その時には既に遅すぎました。Skypeがビデオ通話のみのツールで、メッセージ送信のできないツールになってしまったのです。そして、新機能の追加、新しいアプリ、そしてその後の大規模な再設計など、あらゆる革新が行われたにもかかわらず、Skypeは市場シェアを失い、市場リーダーから数あるビデオ通話ソリューションの1つになってしまいました。

8.CTO(最高技術責任者)は想像以上に重要で影響力がある

私が見てきた5~10年前のユニコーン企業は全て驚くほどの技術的負債を抱えていました。その技術的負債の多くは理解できるものでした。その会社は、すぐに検証されたアイデアからスタートしました。MVPは予想をはるかに上回り、その会社は誰もが期待していたよりも速くスケールアップしました。製品のv1はまだプロトタイプで動いていました。v2では、アーキテクチャなどに取り組む時間はほとんどありませんでした。5~8年経った今でも、何百万人もの有料ユーザーと何百、何千人もの開発者がいますが、迅速に動くことが不可欠です。しかし、エンジニアリングが長い間背負ってきた莫大なアーキテクチャと技術の負債を返済することについてはどうでしょうか?

私は、技術的負債に対処するための現実的なアプローチを取りながら、組織が成果を出し続けることを可能にした健全なエンジニアリング文化を浸透させるためには、強力なCTOが不可欠であることを見てきました。また、そのような CTO がいないことは、早い段階で目に見えていました。暫定的なCTOや全く干渉してこないCTOしかいないところや、エンジニアリングのアウトプットと品質が非常にその場しのぎのところがありました。良いチームもありましたが、それ以外のチームは負債が積み重なって対応できず、小さな変更でも出荷までに痛いほど時間がかかってしまうチームがたくさんありました。

Uberは、安定したハンズオンのCTOがもたらす違いを体験した場所でした。Uberは、私がこれまで働いてきたどの会社よりも短期間で高い成長を遂げていました。入社して驚いたのは、大規模な開発者ツールチームが開発者のワークフローを改善しているのを目の当たりにしたことです。開発者とoncallツール、そしてモノレポへの先行投資がありました。技術的負債に関する議論は、エンジニア間だけでなく、CTOレベルでも起こりました。私たちは、Fixit weeks(プロダクト改善イベント)のようなトップダウンでサポートするイニシアチブを開始しました。エンジニアは、他の会社がやっているのを見たことがないような投資を行うことができました。そしてその多くは、CTOが他の事業で強い信用と信頼を築いてきたことに起因していると確信しています。

私が知っている中で最も実践的なエンジニアリングリーダーの一人であるブライアンがエンジニアリング担当SVP(本部長)としてSkyscannerに入社し、すぐにCTOになったときにも、同じような変化が見られました。ブライアンは2年の間に、自律的なエンジニアリングチームの慣習を構築する上で強く影響を与えました。ブライアンは、私が知っている中で最も実践的な経営者の一人であり、最新の技術に精通し、アーキテクチャの議論に深く入り込み、挑戦的であると同時に、エンジニアやエンジニアリングマネージャーに力を与えてくれました。この信頼をもとに、全社的な開発のベストプラクティスを導入し、より速く、より高い品質で反復作業を行うように変更を加えました。

9. ベテランの人ばかりが会社と一緒に成長するわけではない

私が一緒に働いた中で、最高に感銘を受けた人たちの中には、起業したて頃からの社員もいました。しかし、そういった古参の社員の全員が同じように偉大だったわけではありません。それぞれの会社では、避けた方がいいと思った人が数人いました。この人たちには2つのタイプに分かれました。

会社と一緒に成長しなくなった人もいます。典型的な創業の頃からの古参の従業員は、エンジニアからシニアエンジニアになり、技術リーダーになったのですが、その後、あまり良いリーダーではないことが発覚しました。本人の成長が止まってしまったことで、他の初期の頃からの社員が不満を持っていることや、他の初期の社員の方が早く進んでいることが目に見えていました。これらの人たちは、単独でなら仕事を上手くこなす方法を知ってはいましたが、そういう人たちと同じチームで一緒に仕事をするのは気持ちの良いものではありませんでした。

もう一人のタイプは、「働かないのにストックオプションで儲けられるのを待っている」タイプの人ですが、とても印象に残っています。私が入社したときには、ユニコーン企業のいくつかはまだ出口戦略を行っていませんでした。つまり、初期の従業員が退職してしまった場合、彼らはオプションを行使するために頻繁に大きなお金を払い出さなければならなかったでしょうが、それでもそれでお金を稼ぐことはできませんでした。だから、何人かのペーパーリッチな人(自社株だけはたくさん持っていたに違いない人たち)は、最初の現金化できるタイミングを待ちながら、手持無沙汰にしていました。結局こうなると、大抵はすぐに辞めてしまいます。

初期の社員との違いは、本当に優秀な人材だったことです。私は幸運にも、Skypeの創業エンジニアやUberのモバイルエンジニア1号の方たちと一緒に仕事をすることができましたが、その方たちは皆、とんでもなく優秀だったのです。しかし、ユニコーン企業に入社するときは、初期からいる従業員の全員が素晴らしい人ばかりだと思わないでください。誰が優秀で、誰がそうでないかすぐに分かると思います。

10. 「VIP」バグレポートは、通常のバグレポートの100倍の注目を集める

これらの企業のCEOと経営幹部の全員は、常に製品のチャンピオンユーザーであり、支持者でした。そして、彼らは熱心なバグの報告者でもありました。理論的には、これでいいことだと思うのですが、実際には、かなりのストレスになります。

どこの会社でも、少なくともCEOレベルのバグがチームに回ってきて、出来るだけ早くにソートする必要があります。次の四半期に修正することを優先した既知の問題であれば問題ありませんでした。あるいは、社内の社員にしか見えない問題であったことであればよかったのですが。我々がやっていた作業の手を止めて、CEO/創始者/幹部による具体的な問題が二度と起こらないように修復する必要がありました。

こういった作業でイライラしたのは、商品がほとんど改善されなかったことでした。私のチームや、組織が顧客の問題をより良くトリアージしたり、より多くの問題を修正したりすることはめったにありませんでした。例外もありましたが、トリアージプロセスがしっかりしていて、顧客の問題に注意を払うという慣習があったとしても、「VIPエスカレーション」がなくなることはありませんでした。

11. 古参の社員は必ずしも待遇がいいとは限らない

ユニコーン企業の起業当初の10~20人の従業員たちは、その企業がユニコーン企業の評価額に達するまでに億万長者になるのではないかと、私は常々思っていましたが、そうではありませんでした。これは一部の企業には当てはまるかもしれません。初期の段階で株式気前よく配布されることもありますが、私が見てきた経験則ではそういうことはありませんでした。

いくつかのケースでは、数年後に入社したが、より上手に交渉をした人々は、何年も働いている古参の従業員よりも給与が優遇されていたということもあります。つまり、同じレベルだということです。特にスカイプでは目を見張るものがありました。他のユニコーンとは全く違うやり方をしているように見えました。私が理解していたように、eBayの買収によって、初期のSkypeエンジニアの多くが金持ちになったわけではありませんでしたし、その後のプライベート・エクイティ(非公開企業の株式)の買収によって、古参のエンジニアにはほとんど何のインセンティブももたらされませんでした。私は、7年前からSkypeの株式を保有しているベテランエンジニアを知っていますが、Skypeが買収(eBay、Silverlake、Microsoft)を複数回された後の給与は、数ヶ月分ほどあったそうです。

もちろん、タイミングとずっと会社に貢献し続けてきたくれたおかげで、創業当時からいる待遇のよかった社員の方とも知り合えました。しかし、それは普遍的なルールではなかったのです。もしあなたが大金を稼げると思って創業からスタートアップ企業に入社しているのであれば、あなたは失望することになるでしょう

12. あなたが思っている以上に人からあなた自身とブランドを関連づけられる

私はたまたま、何百万人もの人が使っている有名ブランドで働いていました。すると思わぬところで「名声」がついてきました。

友人や家族がSkypeやSkyscanner、Uberで何か問題があれば、私にメッセージを送ってくるようになったのです。私の仕事のアカウントには、見知らぬ人がバグ報告をしたり、カスタマーサポートにつないでほしいというメールがランダムに届くようになっていました。HackerNewsのような公開フォーラムで自分が働いている会社のことに触れたら、色んなシステムの実装方法に関する質問が殺到するだろうと思います。

ブランドに関連づけられることは、技術的な話をしたり、ブログを書いたりする際にも意外とプラスになっています。もし、「{Skype/Skyscanner/Uber}の開発者」という肩書がなければ、ミートアップや技術会議での講演依頼はもっと少なかったと思います。働いていた企業を辞めて、そういった話ができるようになって、各社の技術選択やベストプラクティスについての話をしていると、多くの人が非常に興味を持ってくれます。Uberで分散型決済システムを構築することを学んだことに関する私の投稿は、今でもこのブログで最も読まれている投稿の一つです。

ブランドに関連付けられることは普段、差し引きでプラスなっていますが、私自身には不利に働いています。私のチームがどのようにマイクロサービスからUberの 「macroservices」に移行しているか、について言及したツイートが、テック系のTwitterで話題になりました。

多くの人がこれをUberがマイクロサービスを放棄したと解釈し、私のフォローアップでのリプライを読み、私が意図した通りにメッセージを解釈している人はほとんどいませんでした。High Scalability(高拡張性)と彼らの記事 「One Team at Uber is Moving to Macroservices( Uberのあるチームが Macroservicesに移行中)」は、このスレッドのまともなまとめでした。

13. スリル満点-特に最初の3ヶ月間は

際初の3ヶ月間は、文字通りユニコーン企業ばかりで頭がクラクラしていました。これらの高成長-時には過度の成長-の場所は、信じられないほどのエネルギーを持っています。

Skypeに入社して1年目、Skype for XBox Oneを出しました。Skyscannerでは、BtoBの旅行予約ツールを構築し、Transferwiseを最初のクライアントとして立ち上げ、ロンドンのエンジニアリングオフィスを開設する傍ら、サイトのエンジニア1号を務めました。そしてUberでは、4ヶ月足らずでゼロからライダーアプリを作り直しました。どの経験も、アドレナリンたっぷりでスリリングな体験でした。

そして、このスリルが長く続く場合がほとんどでした。ほとんどのユニコーン企業は、私が働いている間も成長を続けていました。それは新しいチーム、新しいプロジェクト、新しいチャンスで溢れていた時でした。しかし、私は1年後には昔の戦争の話ばかりをする「老人」になっていました。そして、同じことをしていてもつまらないと思ってちょうど1年くらいたって、社内で全く違うことに挑戦し、新しい高成長のチャンスに飛びついたのです。

Skypeの中堅開発者からSkyscannerの主任エンジニアになり、Uberの開発者からエンジニアリングマネージャーになった、この私の急速な成長が私の専門的な部分での成長を支えてくれています。


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山本 聡山本 聡9時間前フリーランスWebフロントエンドエンジニア




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